はり・きゅう・あんまマッサージ指圧は、身体全体のバランスを診る「東洋医学」に基づいて体調を整える「伝統的な治療法」です。
東洋医学の歴史は古く、約3000年前に中国で生み出されたといわれています。
日本には、奈良時代に伝わったとされています。
東洋医学は、「身体全体を診て」「身体全体のバランスを整え」身体がもともと持っている「自然治癒能力や免疫力を向上」させ、体調管理を行うという考えに基づいています。
現在では、東洋医学は病気の治療にとどまらず「美容」や「スポーツ」といった分野でも取り入れられています。
鍼灸(はりきゅう)とは、身体の「ツボ」と呼ばれる部分に、金属の「針」を刺したり、ヨモギの葉から作られた「モグサ」をおいて燃やし、温熱刺激をあたえたりして、体調を整える治療方法です。
鍼治療は、髪の毛程度のとても細いステンレス製の鍼を使います。
管鍼法と言われる、円形の金属またはプラスチック製の筒(つつ)を用いる方法か、筒を使わない方法がありますが、どちら方法もあまり痛みはありません。
現在では、衛生面に配慮し、ディスポーザブル(使い捨て)の針が使用されています。
また、子供向けに行われる小児鍼は、鍼を刺さずに、あてたり、さすったりして治療します。
灸(きゅう)治療に使われる「モグサ」は、ヨモギの葉を乾燥させ、葉の裏側の部分だけを集めて作られています。
灸治療は、大きく分けると二つの方法があります。
モグサを直接皮膚の上に乗せ、線香でモグサに火をつける「直接灸」と呼ばれる方法。
皮膚に直接モグサをのせずに間をあけて行う「間接灸」などがあります。
「間接灸」は、皮膚との間に熱さを和らげるものがはいっていますので、温かくて、比較的気持がよいです。
また、「間接灸」は、最近ではドラックストアなどで手に入れやすいので、鍼灸師の指示に従えば、自宅でも行うことができます。
鍼灸治療は、腰痛や肩こり、ひざの痛みといった運動器の症状だけでなく、身体のさまざまな疾患に効果があります。
1997 年に、NIH( アメリカ国立衛生研究所) が、鍼灸療法の科学的にみても効果があるとの発表がされ、WHO( 世界保健機関) でも、様々な症状や疾患について、鍼灸療法の効果や有効性が認められました。
近年の研究で、鍼やお灸で身体の一部を刺激すると、中枢神経の中にモルヒネのような役割をもったホルモン(内因性オピオイド)が放出され、このホルモンが、痛みを脳に伝える神経経路をブロックすることがわかってきました。
また、鍼やお灸の刺激は、神経を刺激して血行を促進し、痛みや疲労の原因となる物質を老廃物として排出する作用も持っています。
さらに鍼やお灸の刺激は自律神経にアプローチし、心臓・血管や胃腸などに作用してその働きを調節していきます。
最近では、人間が持つ免疫力をあげる働きについても様々な研究が行われており、まだ科学的には解明されていませんが、免疫力向上にも鍼やお灸の効果があるされています。
NIH(米国 国立衛生研究所)によると、以下の疾患が鍼灸(はりきゅう)治療で効果があるとされています。
【運動器系疾患】
関節炎・リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腱鞘炎・腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)
【循環器系疾患】
心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ
【呼吸器系疾患】
気管支炎・喘息・風邪および予防
【消化器系疾患】
胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾
【代謝内分秘系疾患】
バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血
【生殖、泌尿器系疾患】
膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎
【婦人科系疾患】
更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊
【耳鼻咽喉科系疾患】
中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・へんとう炎
【眼科系疾患】
眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい
【小児科疾患】
小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善
上記疾患のうち日本では「神経痛・リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腰痛」の慢性症状について、健康保険の適用が認められています。
あんま・マッサージ・指圧は、治療を目的に、手や指等で、もむ・さする・おす・たたく・ふるわせる・引っぱるなどの手技を行う手技療法です。
効果のある症状や疾患としては、肩こり・腰痛・頭痛・頭重・めまい・耳鳴り・倦怠感・疲労・食欲不振・便秘・不眠・冷えなどや、内因性の疾患(神経痛・麻痺・脳卒中後遺症・リウマチ・本態性高血圧など)や、外因性の疾患(関節の変形・骨折・脱臼・捻挫の後遺症など)です。
上記の症状や疾患は、血流が悪くなる事が原因で起こることが多く、あんまマッサージ指圧は血液の循環を改善し、新陳代謝をうながします。
また、心身がリラックスし、ストレスを解消させるリラクゼーション効果も期待できます。
あんまは、古代中国でうみだされ、日本へは奈良時代に伝わったとされています。
あんま(按摩)の按は「おさえること」、摩は「なでること」を意味します。東洋医学的な考え方に基づいた手技療法で、衣服の上から遠心性(心臓の位置から手足に向かって)に施術を行います。
マッサージは、ヨーロッパで生まれ、日本へは明治時代に伝わりました。
マッサージ(Massage)はフランス語が由来ですが、語源はアラビア語の「おす(Mass)」とギリシャ語の「こねる(Sso)」からきています。
オイルやパウダーなどの滑剤を使用して、求心性(手足から心臓の位置に向かって)に直接皮膚を刺激していく施術です。
指圧は、明治時代末から大正時代にかけて日本で生まれました。
大正9年頃に現在の指圧療法の原型となる指圧が浪越徳治郎によって確立されたと言われています。
指圧療法は、衣服の上から、親指を中心に四指や手のひらなどを使い、身体の指圧点(ツボ)を垂直かつ持続的に押していく施術です。
鍼灸(はりきゅう)の治療を行うには、「はり師」「きゆう師」という国家資格(厚生労働大臣免許)、あんま・マッサージ・指圧等の手技療法を行うには、「あん摩マッサージ指圧師」という国家資格(厚生労働大臣免許)が必要です。
厚生労働大臣・文部科学大臣が定めた専門学校や大学などの教育機関で3 年以上の間に、知識や技術を習得し、さらに国家試験に合格することで免許を取得することができます。
「はり師」「きゆう師」「あん摩マッサージ指圧師」の専門学校については、公益社団法人 東洋療法学校協会の「はり師」「きゆう師」「あん摩マッサージ指圧師」の国家試験については、厚生労働大臣指定試験登録機関の公益財団法人東洋療法研修試験財団の、公式ページをそれぞれご確認ください。